2006年11月15日水曜日

「(日本人は富士山を自慢するが)我々が拵えたもんじゃない」(夏目漱石、広田先生)



昨晩、学校の愛国教育とやらで 生徒に富士山の写真を見せて美しい日本を愛しましょうとやっていたのには呆れてものが言えなかった。ここで書いたが言い足らないので漱石先生にご登場願う。

漱石と富士山と言えば、やはり 『三四郎』。漱石は広田先生の口を借りて、「現代日本」の背伸びとナショナリズムを批判する。引用:
すると髭の男は、
「御互は憐れだなあ」といい出した。「こんな顔をして、こんなに弱っていては、いくら日露戦争に勝って、一等国になっても駄目ですね。尤も建物を見ても、 庭園を見ても、いずれも顔相応のところだが、ーーあなたは東京がはじめてなら、まだ富士山を見たことがないでしょう。今に見えるからご覧なさい。あれが日 本一の名物だ。あれより他に自慢するものが何もない。ところがその富士山は天然自然に昔からあったものなんだから仕方がない。我々が拵えたものじゃない」 といってまたにやにや笑っている。三四郎は日露戦争以後こんな人間に出逢うとは思いも寄らなかった。どうも日本人じゃないような気がする。

そう、広田先生(髭の男)が言うように、かりに愛国教育をするとしても 「我々が拵えたもの」をもって愛国心を養うべきだろう。でも、文部科学省はそれを思いつかなかったので「富士山」となった。あほらしい。

富士山と学校教育の関係には長い歴史がある。時代時代で学校教科書に記載 される富士山のニュアンスが変化するのである。これ↓
へぇ〜、 富士山は「日本一」ではなかった時があったのだ!: "7. 第四期国定教科書(1933年昭和8年)の指導書によれば「日本一の名山富士を賛美させ(略)国民が景仰礼讃する感情に共鳴させる」ことが大切と書かれ る。"

現代日本は、昭和8年の時代に戻りつつあるのか!

追記)夏目漱石は、日本人の肉体的貧弱さに付いて書いているが、これに付 いては昨今非常に改善された。学校給食のおかげだとされているが、どうもコドモの体格が良くなったのは、70年代後半からだと思う(学校給食は戦後すぐ始 まったが団塊の世代の体格はそれほど良くない)。散人はマクドナルドの日本進出と大いに関係があると思っている。「食育」と やらでファーストフードを目の敵にしているようでは、日本人はまたもとの「伝統的体格」に戻ってしまうのではないか。

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