2006年1月26日木曜日

『聞き書 山梨の食事』……いわゆる伝統食と本当の伝統食


この本なかなか面白かった。

聞き書 山梨の食事
聞き書 山梨の食事日本の食生活全集山梨編集委員会
農山漁村文化協会 1990-11
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各論がきわめて充実。神は細部に宿る!

「日本の食生活全集」の一冊である。膨大な手間暇をかけた各地の古老からの聞き取り調査。大正末期から昭和初期にかけての人々の生活が手に取るようにわかってくる。この全集はお薦め。

山梨県でも地方によって全くと言っていいほど生活様式が違う。山梨を6地域に分けて毎日毎日の食事内容その作り方から、各行事のときのハレの食事、農作業と、収穫するものと外部から購入するものに分けてその明細と数量等々、細かいことが延々と書いてある。

これぞ日本の伝統食であるが、いま現在われわれが食しているいわゆる白米主体の「和食」とはかけ離れたものだった。カルチャーショック。

面白かったこと:
  1. 日本で一番長寿であるのは(当時のことかな)、上野原周辺の山間部だったそうだ。
  2. 同じく山梨県で一番体格がよく、徴兵検査で甲種合格率が高かったのは、富士五湖周辺の部落だったそうだ。
  3. 両地域ともまたっくコメは採れない。富士五湖では普通の日は毎日トウモロコシの焼団子(朝食)と大麦のオジヤ(昼食)とほうとう(夕食)ばかりを食べていた(メキシコとかスコットランドの食事のようだ。夕食はイタリア風?)。上野原でも同じようなもの(ほうとう、きび、むぎ)。一方、他の地域ではコメが採れたので毎日とは言わないまでも一応コメを食べていた。
  4. 甲府盆地の大店では、食事は毎日コメ。丁稚さんは農家の次男坊三男坊だが、うれしがって白米を大量に食べるので、いっぺんに脚気にかかってしまう。そこで大店の奥さんは白米に小豆を混ぜるとか工夫していたとのこと。

農協は学校給食に白米を押し込もうと必死だが、子供が脚気になると困るよね。冗談はともかく、「地産地消」とか「日本の伝統食に帰れ、コメを食べろ」とか、掛け声は勇ましいが、日本の山村の伝統食とは、“コメを食べない”食事だということだったのである。

学校給食に伝統食をというなら、山梨山間部の伝統食であるオートミール(大麦のオジヤ)とトルティージャ(トウモロコシの焼き餅)はどうだ? いずれも富士五湖地域では毎日食べていた。「甲種合格」ばかりになるぞ。

Posted: Thu - January 26, 2006 at 05:00 PM   Letter from Yochomachi   山中湖   Previous   Next  Comments (7)  

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