2007年8月20日月曜日

鯉を釣る老人


午前中桟橋に釣りに行くと先客が一人。散人みたいな老人だ。桟橋に座り込んで釣り糸を垂れている。見慣れぬ仕掛けなので「何を釣って居られるのですか」と聞くに鯉だという。


山中湖でも鯉の釣り師を見かけるが、何れもセンサー付き長尺竿を数本設置して、自分はその間キャラバン用のボックスカーで一昼夜でも待つというプロみたいな中年男ばかり。この老人の竿はとても短くオモチャみたい。もちろんセンサーなぞも付いていない。「昔ここで十匹も釣ったことがあるが、今日は釣れないね〜」という。餌は芋をまるめて使っていると。口が開くと前歯が一本だけ。こりゃ散人よりも年寄りじゃ(散人の歯は親知らず以外全部ある)。

風がないので直射日光が暑い。バスも食いついてくれずしばらく休憩しようとしたら、鯉釣り老人が「釣れた、釣れた」と小走りで竿にぶら下がったブルーギルを持ってくる。「竿を放置してたら針を飲み込まれてしまった」というが、小生もどうしていいかわからない。老人は無理やり針を力づくで外したためブルーギルは死んでしまった。「ブルーギルは殺してもいいですよ、あいつらブラックバスの卵を食べる悪者だから」と慰めておく。

そのうち風が出てきたので涼しくなった。バスを三匹ゲット。これでお終いにしようと片付けに掛かると、老人が大声で「ちょっと手伝ってくれ!」という。大きな鯉が掛かったが手網で採って欲しいと。大急ぎで側に行くと、老人は鯉を水面まで引き揚げているが、手網ですくおうにも片手では竿が保持できないようだ。責任重大だなと思ったが、たってのお頼みなのでタモで掬い上げたらうまく網に入った。立派な鯉。老人は「今日はこれでお終いじゃ」と大満足の様子。

「ワシは会津だから、鯉は食べる。鯉こくにしたらうまい」という。「僕らも食べますよ、おいしそうですね」と羨ましそうに言っておく。

日陰で休んでいると、老人が缶コーヒーを持ってきてくれた。さっきのお礼だとのこと。御殿場に住んでいてここまで20分だと。

昼になって、カミさんが持ってきてくれたCoCo壱番のカレーを食って、新聞を読むために図書館に。帰りがけに見ると老人は再び桟橋で糸を垂れていた。「今日はこれでお終い」でもなかったみたい。

中国の古いことわざ(注)を思い出した:

一時間、幸せになりたかったら
酒を飲みなさい。

三日間、幸せになりたかったら
結婚しなさい。

八日間、幸せになりたかったら
豚を殺して食べなさい。

永遠に、幸せになりたかったら
釣りを覚えなさい。

注)これは中国の古諺と伝えられているが、ホントは西洋人の釣り師が考えついた言葉らしい。なんでも中国3000年を持ち出して箔を付けるのが彼らのやり方。

Posted: Mon - August 20, 2007 at 05:52 PM   Letter from Yochomachi   山中湖  Previous   Next   Comments

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